おそらくあなたは近い将来、産業廃棄物収集運搬業許可の取得を検討しているか、今すぐ許可が必要になりこの記事にたどり着いたのかもしれません。
みなさん状況は様々ですが、大まかな関心事はやはり、次の3つではないでしょうか?
- 自分は許可が取れるのか?
- 許可を取るには何が必要?
- 許可制度の大まかな流れを知りたい
この記事では、まずは本当に許可が必要かどうかを判断し、その上で許可の要件や取得手順、申請に必要なものを解説しています。また、許可制度の様々な疑問にもお答えしています。
この記事は初めて産業廃棄物収集運搬業許可を取る人、これからまさに許可について調べる人、初心者で向けに抵抗なく理解できるように解説していますので、ぜひ参考にしてください。
まず一番の問題は本当に「産業廃棄物」に該当するのかどうかです。
「産業廃棄物」、「一般廃棄物」、「有価物」の違いは判断できますか?
まだだという人は、許可が必要ないかもしれませんし、他の許可が必要となるかもしれません。
この記事を通して廃棄物の概念をしっかり理解してください。
Contents
産業廃棄物収集運搬業許可とは
許可が本当に必要かどうか検討する
まずは産業廃棄物収集運搬業許可が自分の事業で本当に必要になるのかどうか判断しましょう。
産業廃棄物収集運搬業許可が必要となるのは、他人が排出した産業廃棄物を委託を受けて運搬をする場合に必要になります。よって以下の場合は許可が必要ありません。
- 事業者自らが出した産業廃棄物を自分で運搬する
- 一般廃棄物を運搬する(一般廃棄物収取運搬業許可が必要)
- 有価物=市場的価値がある物(古物商許可が必要)
まずは廃棄物の定義と種類を理解する
産業廃棄物とは、事業活動から出る廃棄物をいい、一般家庭から出る廃棄物は一般廃棄物となります。
ただし、産業廃棄物と一般廃棄物の定義は簡単そうに見えて奥が深いので、その違いが分かりにくいこともあります。
また、廃棄物だと思っていてもそれが市場的価値があれば有価物となり、引き取るには古物商許可が必要となります。
自身の事業で扱うものが何なのか、まずはこれらの違いをはっきりさせましょう。
それによって本当に産業廃棄物に該当するのか再確認してください。
廃棄物の定義の理解に不安のある人はまずはこちらの産業廃棄物とは?|5分で理解できる廃棄物の全体像の記事を一読ください。
危険性が高ければ特別産業廃棄物
産業廃棄物のなかでも、爆発性、毒性、感染性があり、人体や生活環境に被害が生じるおそれのあるものを特別管理産業廃棄物といいます。
通常の廃棄物より危険性が高いので、運搬基準や構造基準は普通の産業廃棄物よりも厳しくなっています。
そのため、産業廃棄物収集運搬業許可とは別に特別産業廃棄物収集運搬業許可が必要となります。
別の許可が必要になることもある
廃棄物の運搬事業には、産業廃棄物収集運搬業許可とは別に次の2つの許可が併せて必要となることが多々あります。
- 一般廃棄物収集運搬業許可
- 古物商許可
一般廃棄物収集運搬業許可は、家庭ごみから出る一般廃棄物を運搬するのに必要となります。
これは、自治体が募集をかけたときのみ応募ができますが、募集の絶対数が限られているので取得をするのは非常に難しい状況です。
一般廃棄物については他の業者にアウトソーシングをするなどの対策が必要となりますが、一般家庭から出る廃家電4品目については産業廃棄物収集運搬業許可で運搬できます。
※詳しくはこちらの家電リサイクル法|産業廃棄物収集運搬業者も一般廃棄物を運搬できる?で詳しく解説しています。
有価物を引き取るには古物商許可が必要ですが、特に廃品回収業や遺品整理業を始める人にとって、廃棄物と有価物(リサイクルできるもの)は紙一重の関係にあるので、古物商許可の取得は必須です。
古物商許可については以下の記事で紹介しています。
産業廃棄物収集運搬業務とは?
産業廃棄物収集運搬業許可には「積替え保管を含まない」と「積替え保管を含む」の2種類あります。
保管施設を設ける場合は、「積替え保管あり」で申請をする必要がありますが、同じ収集運搬業でも手続きの難易度は中間処理業と似たものになります。
この記事では、申請者の多い「積替え保管を含まない」について解説していきます。
※「積替え保管含む」についてはこちらの産業廃棄物収集運搬業許可|積替え保管の2つのメリットを解説で解説しています。
許可は積み地と降ろし地の両方が必要
産業廃棄物収集運搬業許可は、廃棄物の出る排出元(荷積地)と廃棄物の運搬先である処分場(荷降ろし地)の都道府県が異なれば、両方の自治体から許可を取らなければなりません。
また、積み替え保管施設を設ける場合、その施設を設置する場所を管轄する自治体の許可も必要になります。
許可は、原則、都道府県から受けることになります。
ただし、次の場合は都道府県ではなく、※政令指定都市や中核市から受けることになります。
- 政令指定都市や中核市内で積替え保管施設を設けている
- 一つの政令指定都市や中核市のみで収集運搬業が完了する(排出元と処分所が、両方とも横浜市などの場合)
※政令指定都市・中核市とは、大阪市や横浜市など人口が多く大都市の機能を持つ自治体のことです。
荷積み地(排出元) | 積替保管施設 |
荷降ろし地 (処理場) |
許可を受ける自治体 |
兵庫県神戸市 | なし | 兵庫県尼崎市 | 兵庫県 |
兵庫県神戸市 | なし | 大阪府茨木市 | 兵庫県・大阪府 |
大阪府茨木市 | 兵庫県神戸市 | 京都府亀岡市 | 大阪府・神戸市・京都府 |
兵庫県神戸市 | 兵庫県神戸市 | 兵庫県神戸市 | 神戸市 |
許可を取るには要件を満たさなければならない
産業廃棄物収集運搬業許可は、申請をすればそれだけで取れるというものではなく、次の5の要件をすべて満たしていなければなりません。
3、運搬施設があること
5、適切な事業計画を整えていること
要件の詳しい内容についてはこちらの産業廃棄物収集運搬業許可の要件とは? | 5分で理解できる5つの要件の全体像で解説しています。
講習会の受講が必要
申請をするには、講習会を受講し、その修了証が必要です。修了証が届くのは、受講後2~3週間です。
そもそも修了証がなければ、申請自体できないことになるので、早めに許可を取ることを予定しているなら、まずはともあれ、講習会を受講することから始めてください。
現在、この講習会はコロナウィルスの影響によりオンラインでの受講となりましたが、受講後の試験に関しては会場で受けなければなりません。
試験は各都道府県で開催され、どの都道府県でも受講できます。
ただし、日程や定員数が限られていますし、希望する都道府県で開催されない月もあるので、必ずしも希望する会場で受けれるとは限りません。
「今月は試験を受けることができない!」ということがないように、早めに試験の予約をしてください。
※講習会についてはこちらの産業廃棄物収集運搬業許可 | 講習会を受けなければ何も始まらない!で詳しく解説しています。
試験の難易度は?
講習会の試験は、特に難しい試験ではありません。
通常、講習会をしっかり受けて準備をして挑めば、そう簡単に落ちることはありません。
※万一、不合格でも再試験(2回まで)を受けることができますが、再試験に2回落ちると講習会の受講からやり直しとなるので注意が必要です。
申請に必要なもの
申請に必要な書類
法人であれば、一般的には次のものが必要です。
- 申請書類一式
- 住民票
- 登記されていないことの証明書
- 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 定款のコピー
- 講習会修了証のコピー
- 賃借対照表(直近3年分)
- 損益計算書(直近3年分)
- 株主資本等変動計算書(直近3年分)
- 法人税の納税証明書(直近3年分)
- 車検証のコピー
- 運搬車両の写真
- 運搬容器の写真(使用する場合)
住民票と登記されていないことの証明書は役員全員分が必要となります。
※必要書類は都道府県によって多少異なってきます。あらかじめ確認しておきましょう。
必要書類は個人・法人ともにこちらの産業廃棄物収集運搬業許可の必要書類は?|集め方と注意点で詳しく解説しています。
申請に必要な費用
産業廃棄物収集運搬業許可(積替え・保管なし)の申請手数料は81000円必要です。
特別産業廃棄物収集運搬業許可(積替え・保管なし)も同様に81000円です。
審査期間は?
申請をして許可が下りるまでの期間は自治体によりまちまちですが、平均すると60日程度です。
注意点としてこの期間は申請受理後、書類の修正や追加に要した期間と土日祝日、年末年始は含まれません。
審査期間は自治体やその状況によっても異なってきますので、極端に言えば3週間で終わることもあれば、4カ月かかることもあり得ます。
その他疑問、注意点等
許可の有効期間は?
産業廃棄物収集運搬業許可の有効期間は5年です。
引き続き許可を持続させたい場合は、この有効期間が満了する前に更新をしなければなりません。
更新については要件など(特に講習会について)いくつか気をつけなければならないことがあります。
更新申請についてはこちらの産業廃棄物収集運搬業許可の更新で絶対に気をつけたいポイントで詳しく解説しています。
許可を取らずに営業したらどうなる?
廃棄物処理法により、無許可営業として5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科、さらに法人の場合は3億円以下の罰金がとなるので注意が必要です。
また、規制強化や罰則規定の追加など法改正も多く、許可取消処分をはじめ、行政処分や行政指導が多いことも特徴です。
廃棄物処理法は非常に厳しい法律です。許可の取消し等の行政処分から身を守るために廃棄物処理法の理解は必須です。
廃棄物処理法の罰則規定についてはこちらの産業廃棄物収集運搬業許可|廃棄物処理法で必ずおさえるべき違反行為と罰則で詳しく解説しています。
許可品目を追加するには新規申請と同じ労力が必要
新規申請の際は、取り扱う産業廃棄物が何に該当するのか選択することになります。
許可品目を追加する = 取り扱う産業廃棄物の種類を追加するには変更許可申請という手続きが必要となります。
変更許可申請の手続きや費用は新規申請とほとんど変わりません。
2度手間とならないように取り扱う予定のある産業廃棄物は必ず最初にまとめて選択しておいてください。
※住所や車両などがが変わると変更届という届出が必要となります。変更届については許可変更申請とともにこちらの産業廃棄物収集運搬業許可|変更届だけでなく変更許可申請も必要で詳しく解説しています。
ローカルルールが多い
産業廃棄物収集運搬業許可の申請先にはローカルルール = 独自のルールが存在しますので、申請する都道府県によって手続きが結構違ってきます。
この記事で解説しているのは、申請の大まかな部分で共通しているところですが、ローカルルールにより車両の写真の撮り方や必要書類が微妙に異なっていたりします。
許可は廃棄物を収集する都道府県と運ぶ先の処分場のある都道府県の許可が必要となります。収集する場所と処分場の都道府県が異なれば、それぞれの都道府県で許可が必要になるので、ローカルルールには特に注意する必要があります。
まとめ
いかがでしたか?
今回は初心者向けに許可の全体像をまんべんなく理解してもらうように解説しましたので、各項目の細かい部分の解説は控えさせていただきました。
各項目には、さらに詳しく解説をしている記事のリンクを貼ってありますので、そちらを参考にしてください。(特に要件については必ず確認してください。)
この記事で解説しているのは、申請の大まかな部分で共通しているところです。前述のとおり、産業廃棄物収集運搬業許可にはローカルルールがありますので、許可が取れそうなら必ず申請先の自治体に相談・確認をしてください。
産業廃棄物収集運搬業許可は、収集する場所と運搬先の都道府県が異なれば、両方の都道府県で許可を取る必要があります。そのため広域に渡り廃棄物を収集する場合はそれだけ複数の許可が必要になります。
ローカルルールがあるので、例えばA県とB県では許可が取れたが、C県では許可が取れなかったということもなきにしもあらずです。
また、廃棄物処理法は非常に厳しい法律ですので、特に罰則規定の理解は必須です。罰則や許可取得について不安があれば、行政書士などの専門家に相談するのも1つです。