世の中にあるすべてのゴミは、廃棄物と呼ばれ、主に「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2種類に大別されます。

そして、産業廃棄物は事業活動に伴って生じた、20種類の廃棄物のことをいい、一般廃棄物は産業廃棄物以外のものと法律では定められています。

ここだけを見れば、産業廃棄物を定義すること自体はそれほど難しくないように思えます。

しかし、実際は「事業系一般廃棄物」や「有価物」の存在によって産業廃棄物の定義を見誤ることがあります。

あなたの事業で扱う産業廃棄物の1つが実は産業廃棄物に該当していなかったということも少なくありません。

この記事では、産業廃棄物の定義について、特に「事業系一般廃棄物」との違いを事例を交えて重点的に解説しています。また、有価物を定義するための基本的な考え方についても解説しています。

ぜひ一読ください。

 

2種類の廃棄物は5つに分類される

廃棄物は、「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に大別されますが、実際はそんなに単純な話ではありません。

というのも、産業廃棄物は、「普通の産業廃棄物」と「特別管理産業廃棄物」に分別され、また一般廃棄物は、「事業系一般廃棄物」、「家庭系一般廃棄物」、「特別管理一般廃棄物」に分別されているからです。

細かく見れば、廃棄物は5種類に分類されることになります。

なかでも「事業系一般廃棄物」が産業廃棄物の定義を複雑にさせています。

 

産業廃棄物は20種類ある

産業廃棄物は略して産廃(さんぱい)と呼ばれ、事業活動に伴って生じた、20種類の廃棄物のことをいいます。

それぞれの種類のことを「品目」と呼んでおり、20品目の産業廃棄物が存在します。

産業廃棄物の具体的な種類については下の表のとおりですが、発生源が「特定の業種に限定されているもの」と「特定の業種に限定されていないもの」がある点に着目してください。

表を見てみると、例えば、紙くずや木くずの場合は建設業やパルプ製造業などに限定されています。

これらが、建設業やパルプ製造業等以外で発生すれば産業廃棄物にはならないということです。

この場合は、一般廃棄物として扱われます。

これは「産業廃棄物でなければすべて一般廃棄物になる」と法律で定められているからです。

※特定の業種に限定されているものについては後ほど詳しく解説します。

種類 具体的例
燃え殻 石炭がら、焼却炉の残灰、炉清掃排出物、その他焼却残さ
汚泥 工場廃水など処理汚泥、各種製造業の製造工程で生じる泥状物、建設汚泥、下水道汚泥、浄水場汚泥
廃油 鉱物性油、動植物性油、潤滑油、絶縁油、洗浄油、切削油、溶剤、タールピッチ等
廃酸 写真定着廃液、廃硫酸、廃塩酸などのすべての酸性廃液
廃アルカリ 廃ソーダ液等の全てのアルカリ性廃液
廃プラスチック類 合成樹脂くず、合成繊維くず、合成ゴムくずなど合成高分子系化合物
ゴムくず 天然ゴムくず
金属くず 鉄くず、アルミくず、研磨くず、切削くず等
ガラス・コンクリート・陶磁器くず ガラスくず、製品の製造過程等で生ずるコンクリートくず、陶磁器くず、セメントくずなど
10 鉱さい 鋳物廃砂、電炉等溶解炉かす、ボタ、不良石炭、粉炭かすなど
11 がれき類 建物の新築・改築・解体により生じたコンクリート破片、アスファルト破片など
12 ばいじん 工場や焼却施設の排ガスから集められたばいじん
13 紙くず 建設業に係るもの(工作物の新築、改築または除去により生じたもの)、パルプ製造業、製紙業、紙加工品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業から生ずる紙くず
14 木くず 建設業に係るもの(工作物の新築、改築または除去により生じたもの)、木材・木製品製造業(家具の製造業を含む)、パルプ製造業、輸入木材の卸売業および物品賃貸業から生ずる木材片、貨物の流通のために使用されたパレット等
15 繊維くず 建設業に係るもの(工作物の新築、改築または除去により生じたもの)、衣服その他繊維製品製造業以外の繊維工業から生ずる木綿くず、羊毛くず等の天然繊維くず
16 動植物性残さ 食料品製造業、医薬品製造業又は香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物、のりかす、醸造かす、発酵かす、魚および獣のあら等の固形状の不要物
17 動物系固形不要物 と畜場において処分した獣畜、食鳥処理場において処理した食鳥に係る固形状の不要物
18 動物の糞尿 畜産農業から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとり等のふん尿
19 動物の死体 畜産農業から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとり等の死体
20 上記の19種類の産業廃棄物を処分するために処理したもの(コンクリート固形化物など)

※13から19までの太字で表示された産業廃棄物については特定の業種から排出されるものに限定されます。

 

品目の判断ミスに注意

廃棄物の中には他の品目と勘違いをしてしまう紛らわしいものもあります。

特に「廃プラスティック類」は勘違いしやすいので、注意が必要です。

例えば、同じゴムくずでも廃タイヤなどの合成ゴムくずは、「廃プラスティック類」に該当します。

これは、品目の「ゴムくず」が天然のゴムくずのみを指定しているからです。

また、「繊維くず」も天然の繊維くずのみを指定しているので、例えば合成繊維を原料としている洋服などは廃プラスティック類に該当するので注意が必要です。

また、他にも「がれき類」と「コンクリートくず」もよく混同されやすいです。詳しくはこちらの産業廃棄物のがれき類とは?|がれき類とコンクリートくずの違いまで解説!で解説しています。

 

事業活動に伴うものって?

事業活動に伴って排出されるものが、産業廃棄物となりますが、この「事業活動」の定義は広範囲に及びます。

事業活動には、建設業、運送業、製造業、サービス業、一般事務、学校、研究所、病院など挙げればキリがありませんが、法人、個人事業問わずすべての事業が対象となります。

また、この事業活動は「営利事業」だけでなく、NPO法人やNGO法人などの「非営利事業」も対象となります。

 

特別管理産業廃棄物とは?

産業廃棄物には毒性や爆発性を強く含むものがあり、人体の健康に悪影響を与えたり、普通の廃棄物より危険度が高いものがあります。

このような廃棄物を特別管理産業廃棄物といいます。

ここでは詳しい解説は避けますが、飛散性のあるアスベストやPCB廃棄物、燃えやすい廃油、血液のついた注射針などがあります。

特別管理産業廃棄物についてはこちらの特別管理産業廃棄物とは?|かゆい箇所も徹底解説!で詳しく解説しています。

普通産廃の許可では運搬・処分できない?

特別管理産業廃棄物を扱うには、運搬基準や構造基準が細かく規定されており、高度な管理が求められます。

そのため、普通産廃の運搬・処分の許可とは別に特別管理産業廃棄物の許可が必要となります。

 

産業廃棄物と一般廃棄物の違い

一般廃棄物は、「事業系一般廃棄物」、「家庭系一般廃棄物」、「特別管理一般廃棄物」に分別されているということをお話しましたが、なかでも「事業系一般廃棄物」の存在は、産業廃棄物の区分を非常に分かりづらくしています。

「事業系」一般廃棄物という名前からも分かるように、事業活動から排出される廃棄物は産業廃棄物だけではないからです。

特定の業種に限定される

産業廃棄物のなかでも紙くず、木くず、繊維くず、動物性残さ、動物性固形不要物、動物の糞尿、動物の死体の7品目に関しては排出する業種が特定されています。

特定業種から排出されるものは、産業廃棄物となりますが、特定業種でなければ一般廃棄物となります。

これがいわゆる、「事業系一般廃棄物」です。

例えば、オフィスから使用済みの紙くずを破棄するような場合はどうでしょうか?

紙くずは、建設業やパルプ製造業など特定の業種に限定される産業廃棄物です。

「オフィスでの業務」は特定業種ではありませんので、事業系一般廃棄物となります。

※クリックすると拡大表示されます。

 

産業廃棄物?事業系一般廃棄物?

産業廃棄物と事業系一般廃棄物について混同しやすい事例を解説します。

ここですべての事例を紹介することはできませんが、ここでの事例を基準にしてその違いを判断するための考え方をまずは養ってください。

 

輸送や倉庫保管などの物流過程で消費期限切れとなった食品は?

動植物性残さは、「食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業」から排出された場合に産業廃棄物となります。

つまり、製造段階で破棄される場合は、産業廃棄物となりますが、倉庫で保管されているものを破棄する場合は通常、一般廃棄物として扱います。

ただし、ここは判断の分かれるところです。

例えば、食料品メーカーの倉庫に保管をしていたり、売り渡す前の運送途中で、イレギュラーが生じて破棄するような場合は、食品メーカーの廃棄物なので産業廃棄物として扱うのが妥当という場合もあります。

逆に卸業者などに売り渡した後に保管をしていたり、運送中に廃棄物となった場合は、事業系一般廃棄物として扱うのが一般的です。

 

スーパーから出るカット野菜や肉くずは?

スーパーマーケットからでる動植物性残さは、事業系一般廃棄物となります。

スーパーと食品工場から出るカット野菜や肉くずはどちらも同じものですが、スーパーは特定業種 = 食料品の製造業ではないからです。

ちなみに、スーパーの調理場で揚げ物を揚げて出た「廃油」は、特定業種が指定されていないので、産業廃棄物となります。

 

工場や工事現場に入る際に使うヘルメットは?

工場や工事現場に入る際は安全確保のためヘルメットの着用が義務づけられています。

ヘルメットは仕事をする上で切っても切れないものなので、事業活動に伴って発生した廃棄物と判断できます。

また、ヘルメットは廃プラスティック類に該当するので産業廃棄物となります。

 

造園業で発生する枝の切りくずは?

造園業で発生する枝の切りくずは、「木くず」に該当します。

しかし、「木くず」は、特定の業種に限定されています。造園業は、建設業、木製品製造業、パルプ製造業のどれにも当てはまりませんので、造園業で発生する「木くず」は一般廃棄物となります。

 

流通業の倉庫から出た木のパレットとその梱包材として使った木くず

貨物の流通のために使用した木パレットは、産業廃棄物の「木くず」となりますが、その梱包材として使用した木くずも同様、産業廃棄物となります。

注意したいのは、これらに関しては業種の限定がありません。

つまり、事業活動に伴って生じたものであればすべて産業廃棄物となります。

 

 

建設現場で弁当を食べた後に出た割りばしは?

木くずは、建設業に係るもの、特に(工作物の新築、改築または除去により生じたもの)と限定されており、割りばしは工事に密接しているとは言えないので、一般廃棄物とする考え方が一般的です。

ただし、一部では広く解釈をして産業廃棄物とする考え方もあるようです。

 

有価物について

これまでは、産業廃棄物の定義について解説してきましたが、それ以前にそもそも「廃棄物」に該当するのかという点についても少し触れておきたいと思います。

というのは、必ずしも不要品 = 廃棄物と言えないからです。例えばオフィスの移転などで産業廃棄物として机や椅子を排出したとしても、それに市場的価値があれば中古品 = 有価物となるケースもあります。

※有価物を引き取るには古物商許可が必要となります。

 

もっと言えば、空き缶などはどうでしょうか?それが1つだけなら廃棄物だと誰もが思うでしょう。

しかし、ある程度大量に集まればそれを資源として買取ってもらえます。

空き缶はアルミニウムでできており、金属リサイクルができるからです。

※アルミ缶など金属スクラップを売買する場合、都道府県によっては金属くず商許可が必要です。

 

このように考えると、廃棄物の定義は、「自分にとっても不要物であって、誰にも買取ってもらえない(市場的価値がない)もの」となります。

 

有価物は総合判断説で判断する

有価物に該当するかどうかは、

  • 物の性状
  • 排出の状況
  • 通常の取り扱い形態
  • 取引価値の有無
  • 占有者の意思等

を総合的に判断して決定されます。これを総合判断説といいます。

このように言ってしまうと非常に難しく感じてしまいますが、手短に確実な判断基準を示すとすれば、売却後もその物がきっちりと再利用されているかどうか、もしくは売却された有価物がその後も再生品として市場的需要を保ているかどうかという点です。

つまり、1円でも売却できればそれだけで有価物となるわけではないということです。

一部で市場的需要があっても、その物を全体として見ればその大半が廃棄物処理をされているような場合は有価物には該当しません。

 

到着時有価物に注意

排出事業者が運送費を支払っている場合は注意が必要です。

排出事業者が運送費やリサイクル料を支払った結果、有価物の売却利益を上回ってしまい、排出事業者が何らかの経済的損失を受けていれば廃棄物になってしまいます。

ただし、廃棄物として扱うことになるのは処分場へ運送している間だけです。処分場に引き渡した時点で有価物となるので、これを到着時有価物といいます。

処分場に到着するまでは産業廃棄物として扱うので、当然マニフェストの運用が必要となります。

まとめ…最終判断は自治体がする

いかがでしたか?

この記事では「産業廃棄物」の定義について特に「事業系一般廃棄物」との違いについて重点的に解説しました。

 

ご自身の事業で扱う廃棄物が「産業廃棄物」なのか「事業系一般廃棄物」なのか、そして「有価物」のどれに該当するのか必ずはっきりさせておかなければなりません。

排出事業者であれば事件や不適正処理に巻き込まれないように、不要物を引き取る業者であれば無許可営業とならないようにしなければならないからです。

 

しかし、この記事でも事例として紹介しましたが、どうしても判断が難しい廃棄物も少なくありません。

 

そのような場合は、いくら書物や法律を読み込んでも判断はつきません。仮に何かしらの解釈が示されていたとしても、いくつかある解釈の1つに過ぎない可能性もあります。

それは、自治体、つまり都道府県等によって解釈が異なってくることがあるからです。そして、産業廃棄物に該当するかの判断は最終的にはやはり自治体が行うことになります。

判断が難しい場合は管轄の自治体に問い合わせて確認することが必要です。