爆発性、毒性、感染性のある産業廃棄物のことを特別管理産業廃棄物といいます。
特別な管理が必要とされる廃棄物のことで、特管物と略して呼ばれることもあります。
また、事業活動にともなって排出されないものは特別管理一般廃棄物になります。
特別管理廃棄物は取扱いを誤ると、人体や生活環境に深刻な悪影響を与えるので厳格に管理する必要があります。
この記事では、ご自身の扱う廃棄物が特別管理産業廃棄物に該当するのかどうか大まかに把握できるようにその概要を解説しました。ぜひ参考にしてください。
Contents
特別管理産業廃棄物とは?
特別管理産業廃棄物は主に次の4種類に分別されます。
燃えやすい廃油(引火性廃油)
強酸・強アルカリ
感染性産業廃棄物
特定有害産業廃棄物(有害物を含む廃棄物)
具体的な内容と種類は以下の表のとおりです。
分類 | 内容 | |
引火性廃油 | 揮発油類、灯油類、軽油類(引火70℃未満の廃油) | |
強酸・強アルカリ | PH2.0以下の酸性廃液、強アルカリはPH12.5以上のアルカリ性廃液 | |
感染性産業廃棄物 | 病院や診療所などから発生した産業廃棄物のうち、感染性病原体が含むかそのおそれのある廃棄物(血液の付着した注射針や採血管など) | |
特定有害産業廃棄物 |
廃PCB等 | 廃PCBおよびPCBを含む廃油 |
PCB汚染物 |
・PCBが塗布され、または染み込んだ汚泥、紙くず、木くず、繊維くず ・PCBが付着、または封入されたプラステック類、金属くず ・PCBが付着した陶器くず、がれき類 |
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PCB処理物 | 廃PCB等またはPCB汚染物を処理したもので、一定濃度以上のPCBを含むもの | |
廃石綿等 |
・建築物から除去した飛散性の吹き付け石綿、石綿含有保湿材料 ・石綿除去工事に用いられ、廃棄されたプラスチックシート、防塵マスクなど ・大気汚染防止法の特定粉じん発生施設で生じたもので、集じん装置で集められた飛散性の石綿など |
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有害産業廃棄物 | 水銀、カドミウム、鉛、有機燐化合物、六価クロム、ひ素、シアン、PCB、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレン、1,4-ジオキサンまたはダイオキシン類を基準値以上を含んでいる汚泥、鉱さい、廃油、廃酸、廃アルカリ、燃え殻、ばいじんなど |
特別管理一般廃棄物
一般廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他、人の健康または生活環境に係わる被害を生じるおそれのあるものは特別管理一般廃棄物となります。
大まかに以下の5つに分類されます。
- PCB部品(廃テレビ・廃エアコン等に組み込まれているもの)
- 廃水銀
- ばいじん
- ばいじん、燃え殻、汚泥※
- 感染性一般廃棄物
※廃棄物焼却炉(ダイオキシン特措法の特定施設)から発生したもので、ダイオキシン類を3ng/gを超えて含有するもの
特別管理廃棄物の注意点・補足事項
普通産廃と特管物を運搬するには両方の許可が必要
特別管理産業廃棄物を他社から委託を受けて運搬するには、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
これはよく誤解されがちなのですが、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可を取得したからといって普通産廃を運搬できるわけではありません。
いわゆる、「大は小を兼ねる」ということはできません。
例えば、廃油・廃酸・廃アルカリの3つは特管物として定められた基準値を満たさなければ、普通産廃となります。
つまり、引火70℃以上の廃油、PH2.0以上の廃酸・PH12.5以下の廃アルカリは普通産廃となりますが、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可では運搬できません。
上記3つの産廃に限りませんが、普通産廃も運搬するという場合は、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可とは別に普通産廃の許可(産業廃棄物収集運搬業許可)も取得する必要があります。
感染性産業廃棄物について
感染性産業廃棄物については、以下の医療機関等に排出場所が限定されています。
- 病院、診療所、保健所、血液センター、衛生検査所、介護老人保健施設、助産所、動物の診療施設や試験研究機関(医学、歯学、薬学、獣医学に係るものに限る。)
上記以外の施設から排出される廃棄物はいくら血液などの感染性病原体が含まれていても「感染性産業廃棄物」とはなりません。
もっと細かく言えば、「排出場所」以外にも「形状」と「感染性の種類」も含めて感染性の有無を判断することになります。
感染性廃棄物についてはこちらの感染性廃棄物の分類から収集運搬・処理方法まで解説で詳しく解説しています。
PCB廃棄物について
PCB廃棄物は、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可の許可基準が他の特別管理産業廃棄物と異なっています。
通常の許可基準に加えて、運搬容器や運搬車両の規定が強化されています。
さらに、管理責任者を選任するためにJWセンターが実施する講習会を受講しなければなりません。
なので、PCB廃棄物の場合は、他の特管物に比べて許可申請の手続きにやや手間を要することになります。
PCB廃棄物についてはこちらのPCB廃棄物とPCB特措法の概要+運搬・処理時のポイントまで解説で詳しく解説しています。
廃石綿等について
アスベストを含む産業廃棄物には、廃石綿等と石綿含有産業廃棄物の2種類あります。
このうち、廃石綿等は特別管理産業廃棄物に該当します。
一方、石綿含有産業廃棄物に関しては、特別管理産業廃棄物ではなく、普通産廃に分類されます。
石綿含有産業廃棄物とは、いわゆる、屋根用化粧スレートやタイルなどの石綿が混入している廃棄物です。
「石綿含有産業廃棄物」とは工作物の新築、改装又は除去に伴って生じた産業廃棄物で、石綿をその重量の0.1%を超えて含むもので、飛散性のないものと定義されています。
※廃石綿等と石綿含有産業廃棄物についてはこちらのアスベスト|廃石綿等と石綿産業廃棄物の違いを分かりやすく解説で詳しく解説しています。
水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじんについて
「水銀使用製品産業廃棄物」と「水銀含有ばいじん」については特別管理産業廃棄物ではなく、普通産廃に分類されます。
水銀使用製品産業廃棄物とは、水銀が含まれる蛍光灯や乾電池、体温計などの製品が廃棄物となったものです。
一方、水銀含有ばいじんとは、燃え殻、汚泥、鉱さい、ばいじん、廃酸、廃アルカリのうち、水銀を一定量以上(15mg以上)を含むものと規定されています。
有害産業廃棄物について
有害産業廃棄物のうち、汚泥・鉱さい・廃油・廃酸・廃アルカリ・燃え殻・ばいじんは、ダイオキシン類などの有害物質を一定濃度を超えて含んでいる場合に有害産業廃棄物となります。
上記のうち、鉱さい以外は、排出業種と排出施設が規定されており、いくら有害物質を基準値以上含んでいても、規定された業種と施設から排出されなければ、法的には有害産業廃棄物とはなりません。
※鉱さいは、有害物質を基準値以上含んでいれば、それだけで有害産業廃棄物に該当します。
感染性廃棄物とばいじんを収集運搬する際の特例
前述のとおり、一般廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他、人の健康または生活環境に係わる被害を生じるおそれのあるものは特別管理一般廃棄物となります。
特別管理一般廃棄物の「感染性廃棄物」と「ばいじん」の収集運搬に関しては、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可で収集運搬が可能です。
まとめ
いかがでしたか?
この記事を読んで、あなたの扱う廃棄物が特別管理産業廃棄物に該当しなかったという人も少なくなかったかもしれません。
石綿含有産業廃棄物や水銀使用産業廃棄物等は、特別管理産業廃棄物に該当しませんし、感染性廃棄物や有害産業廃棄物については、排出場所等が限定されています。
特に有害産業廃棄物については、その判断が難しいこともあり、最終的には行政庁が判断することになります。
法的には特別管理産業廃棄物に該当していなくても、状況やその廃棄物の性質から特別管理産業廃棄物にとして処理することが妥当と判断されることもあります。
また、特別管理産業廃棄物収取運搬業許可をもって、普通産廃は運搬できません。普通産廃も運搬するという場合は、別途、産業廃棄物収取運搬業許可が必要となるのでここにも注意が必要です。