産業廃棄物収集運搬業許可申請(積替え保管あり)で許可を受けると、積替え保管施設を設置することができます。

積替え保管は収集運搬業の一形態ですが、許可申請の内容は処理業許可と同様の難易度となっています。

廃棄物の施設を設置するということは、それだけ社会的な責任が重くなるということです。

しかし、積替え保管の許可を取ると、メリットは収集運搬業者にとって非常に大きなものになります。

この記事では、積替え保管のメリットを中心に解説しています。また、保管基準や許可申請の難易度にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。

積替え保管とは?

積替え保管は、収集運搬業の一形態のことで、運搬した廃棄物を一度保管場所に集積し、再度積み替えて運搬することをいいます。

積替え保管の主な目的は、運搬の効率化です。

通常は、排出事業所から受け取った廃棄物を処分場まで直接運搬しますが、これだと少量の廃棄物でも直行しなければいけません。

積替え保管施設を利用すれば、廃棄物を溜めてから、まとめて運搬することができます。

例えば、2トン車で運搬してきたものを、一旦保管施設に溜めておいて、10トン車に積み替えて処分場に運搬するというものです。

また、同じ品目の廃棄物を一定量保管することで、効率的に処理場に運搬することができます。

このように積替え保管は、運送コストを大幅にカットすることができます。

 

有価物を選別・収集できる

積替え保管のメリットは、運搬の効率化だけではありません。

廃棄物の中には、鉄やアルミなど再使用・再利用できるものが沢山あります。

積替え保管施設では、このような有価物を抜き取ることも可能です。

注意点としては、中間処理と違って、性状を変えることはできないということです。

有価物の抜き取りは、手選別が原則となります。

例えば、磁選機で金属くずなどを選別することはできません(機械を使っているので中間処理業になります)

また、有価物の選別・収集をするには、契約書において排出事業者の承諾が必要になってきます。

 

排出事業者責任が曖昧になる?

廃棄物の選別や有価物の抜き取りが行われた場合、廃棄物の性状や荷姿、数量等が排出時と大幅に異なってしまいます。

また、積替え保管を経由すれば、複数の事業者の廃棄物が混ざり合うことになります。

このようなことは、排出事業者にとって「廃棄物の発生から最終処分に至る一連の工程の把握」を極めて困難にさせます。

積替え保管は、運搬業者に大変メリットがある反面、排出事業者にとっては取扱いが難しく、デメリットとなってしまいます。

 

産業廃棄物の保管基準

産業廃棄物を保管するには、保管基準を守らなければなりません。

また、それとは別に、積替え保管施設に特有の保管基準があります。

よって、積替え保管をする場合は、次の2つの保管基準を守る必要があります。

 

通常の保管基準

1、保管場所の周囲には囲いを設けること

2、保管場所にはその旨を記した看板を設置すること

3、ねずみ、蚊、ハエその他の害虫の発生防止措置をとること

4、汚水が発生する場合は排水溝等を設置し、床面を不浸透性の材料で覆う

5、屋外で容器を用いずに保管する場合、高さの制限を超えない

6、産業廃棄物が飛散し、流出し、地下浸透し、悪臭が発散しないようにすること

 

積替保管施設の保管基準

・あらかじめ、積替えを行った後の運搬先が定められていること

・搬入された産業廃棄物の量が、積替場所において適切に保管できる量を超えないこと

・搬入された産業廃棄物の性状に変化が生じないうちに搬出すること

・積替保管量の上限は、1日あたりの平均搬出量の7日分を超えないこと

※積替保管量が一日あたりの平均搬出量の7日分を超えないということは、いくら保管施設を大きくしてもそれ以上は積めないということです。

ただし、2つの保管施設を設置すれば、全体として平均搬出量の14日分を保管することができます。

 

積替保管ありとなしでは許可申請の難易度が全然違う

前述のとおり、積替え保管は収集運搬業の一形態ですので、産業廃棄物収集運搬業許可(積替保管あり)として申請することになります。

しかし、実際は保管施設を設置することになるので、許可申請の難易度は処理業許可と似ている側面があります。

収集運搬業許可との違いは、「事前協議」があることです。

「事前協議」とは、簡単に言うと保管施設を設置することで周辺地域の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがないかなど、適切に保管ができるかどうか協議します。

自治体によっては施設の周辺住民の同意が必要な場合もあります。事前協議で同意等が得られない場合は、許可を取得できません。

また、積替保管の場合、立地による法的制限を受けます。

例えば、建築基準法では建築可能な建物が用途地域ごとに定められています。 

特に住居専用地域は法的制限が非常に厳しいものとなります。※工業地域がおすすめです。

他にも、自治体によっては山林法、河川法、文化財保護法、鳥獣保護法などの法的制限を設けている場合があります。

 

まとめ

積替え保管施設のメリットは、運送効率の向上だけでなく、有価物の収拾が可能だということをお話ししました。

有価物を収集し、資源として売却すれば収益を得ることもできます。

また、産業廃棄物収集運搬業許可(積替え保管あり)の要件や必要な手続きは処理業許可と似ている側面があり、どうしても難易度は高くなります。

注意点としては、事前協議が難航することがよくあり、許可が下りるまで半年以上かかることがあります。また、申請にかかる費用も大きいです。

ただし、自治体によっては事前協議がないところもあったり、必要な手続きや要件も自治体によって全然違ってくることがあるので、まずは自治体に確認することから始めてください。