産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するためには欠格要件というものに該当していないことが必要です。

この欠格要件は、廃棄物処理法という法律に列挙されており、該当していないか一つ一つチェックしなければなりません。

とはいっても、言葉が難しく、内容がいまいち理解できないという人もいるのではないでしょうか?

この記事では、欠格要件の内容一つ一つを初心者でも分かるように解説しています。

それでは、欠格要件について確認していきましょう。

 

欠格要件って?

欠格要件というと、難しく考えてしまいがちですが、過去に法律違反があったり、犯罪を犯してしまったりと普段真面目に生活をしていればすでにクリアしていることばかりです。

なかには、

  • 人を殴ってしまい警察にお世話になったことがある
  • 罰金を支払ったことがある
  • 破産の経験がある

という人もいるかもしれません。

もちろん、内容によっては上記のような経験があれば欠格要件に該当してしまうこともあります。

しかし、犯罪を犯したからといってもそれがずいぶん昔の話だったり、そもそもその法律違反が欠格要件に該当していないということもあります。

つまり、本人が欠格要件に抵触してしまっていると思い込んでいるケースも少なくないので、欠格要件にどのようなものがあるのかしっかり理解することが重要です。

 

欠格要件の対象者

個人なら本人だけですが、法人の場合は代表取締役だけではありません。

役員などの経営陣も対象となります。代表取締役が全ての欠格要件に該当していなくても、

対象となる経営陣の1人が1つでも欠格要件に該当すれば許可は取得できません。

法人の具体的な欠格要件の対象者は以下の通りです。

・法人自体

・役員

・政令使用人

・法定代理人

・相談役、顧問、監査役

・5%以上の株主

 
※政令使用人とは、本店や支店の営業所長など、契約締結権限のある者のことを指します。
 

役員から外すという考え方

極端な話、仮に欠格要件に該当する人がいても、それが役員ではなく従業員なら許可は取れます。

少し強引ですが、要件に該当する人を経営陣から外して、従業員として働いてもらい、代わりの人を新たに経営陣に加えるという方法もあります。

 

欠格要件の一覧

次のいずれか1つでにでも該当すれば許可は取得できません。

 

1つずつ確認していきましょう。

 

成年被後見人、被保佐人

センシティブな話になってしまいますが、成年被後見人、被保佐人とは精神障害などにより判断能力を欠く人のことです。

また、成年被後見人と被保佐人は家庭裁判所で後見開始の審判を受けないとなり得ません。

 

破産者で復権と得ない者

破産者で復権と得ない者とは自己破産の経験があるという意味ではありません。

自己破産の経験があっても複権を得ていれば大丈夫です。

復権は通常、破産手続きと同時に行われる免責という手続きによって得ることができるので、すでに復権をしていたということがほとんどです。

 

復権とは、一度失った権利を回復することをいいますが、一体何が制限されるのでしょうか?

 

自己破産をすると色々な権利が制限されることになります。例えば、特定の職業(弁護士、税理士、警備員など)に就くことができなかったり、許可なく引越ができないというような制限を受けます。

復権をするとこれらの制限がなくなり元に戻ることができます。

どれくらいの期間で復権できるの?

各自状況にもよりますが、通常は3~6か月の程度で、「免責許可」が裁判所から出されることで復権を得ることができます。

ということは、よほどのことがなければ、遅くても破産手続きから半年も経てば欠格要件には該当していないということになります。

 

禁固以上の刑を受けて、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

禁固以上の刑を受けた場合、どのような犯罪でも欠格要件に該当してしまいます。

禁固以上の刑というのは、「禁固」と「懲役」刑のことです。

2つとも刑務所に入って服役をする刑です。

2つの違いは禁固には労働の義務はありませんが、懲役には労働の義務があるという点です。

よくある質問

Q.罰金刑なら大丈夫なの?

A.刑罰は、

懲役 > 禁錮 > 罰金 > 拘留 > 科料

の順で重くなってきます。

つまり、罰金刑からは欠格要件に該当しないということになります。

ただし、これは原則という意味で次項で説明する特定の犯罪によっては罰金刑でも欠格要件に該当してしまいます。

 

Q.5年経てば、欠格要件に該当しなくなるの?

A.禁固や懲役刑を受けても5年を経過すれば欠格要件に該当しません。

ただし、法律違反をしてから5年ではなく、刑を受け終えてから5年という点です。つまり刑務所から出てから、5年ということです。

 

Q.執行猶予の場合はどうなるの?

A.執行猶予期間中は欠格要件に該当してしまいますが、執行猶予期間が満了した時点で欠格要件には該当しなくなります。

 

特定の犯罪により、罰金刑以上の処罰を受けて5年を経過しない者

原則、罰金刑なら欠格要件には該当しません。

しかし、ある特定の犯罪で罰金刑を受けたのであれば、欠格要件に該当します。

特定の犯罪とは大きく分けると2つあります。

 

まず1つは、次の環境関連の法律のことです。

  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
  • 浄化槽法
  • 大気汚染防止法
  • 騒音規制法
  • 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
  • 水質汚濁防止法
  • 悪臭防止法
  • 振動規制法
  • 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律
  • ダイオキシン類対策特別措置法
  • ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法

これら環境関連の法律違反で罰金刑を受けたのであれば欠格要件に該当してしまいます。

 

そして2つ目は、次の暴力関係の法律違反で罰金刑を受けた場合です。

  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
  • 傷害罪(刑法第204条)
  • 現場助勢罪(刑法第206条)
  • 暴行罪刑(法第208条)
  • 凶器準備集合及び結集罪(刑法第208条の3)
  • 脅迫罪(刑法第222条)
  • 背任罪(刑法第247条)
  • 暴力行為等処罰に関する法律

逆に言えばこれら以外の罰金刑の場合は問題ありません。例えば、交通違反で切符を切られて罰金を支払ったというような場合は問題ありません。

 

よくある質問

Q.5年経てば、欠格要件に該当しなくなるの?

A.罰金刑を受けても5年を経過すれば欠格要件に該当しません。

ただし、法律違反をしてから5年ではなく、刑を受け終えてから5年という点です。つまり、罰金を支払ってから5年ということです。

 

Q.執行猶予の場合はどうなるの?

A.執行猶予期間中は欠格要件に該当してしまいますが、執行猶予期間が満了した時点で欠格要件には該当しなくなります。

 

暴力団関係者

具体的に言うと次のような人です。

  • 暴力団員
  • 暴力団員を辞めてから5年を経過しない者
  • 暴力団員がその事業活動を支配している法人

元暴力団員の人であっても、暴力団と縁を切ってから5年を待たないと許可は取れません。

 

廃棄物関連の許可を取り消され、その日から5年を経過しない者

これは、以前、廃棄物関連の許可を取っていた人が、違反等で許可を取り消されて、あらためて許可を取るときに該当するケースです。

廃棄物関連の許可とは具体的にいえば次のものです。

  • 一般廃棄物収集運搬・処分業の許可
  • 産業廃棄物収集運搬・処分業の許可
  • 特別管理産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可
  • 浄化槽法による許可 

上記の許可を取消された個人事業主や法人自身が対象となるのはもちろんですが、注意したいのは、許可を取消された会社で役員をしていた人も対象となる点です。

役員を迎え入れる際は、その者が過去にどういう会社にいたのかきっちりと調べておくことが必要です。

許可を失うケースは、違反で取消される以外にも、自ら「返納する」場合もあります。

返納とは、違反が原因ではなく、事業をやめるときなど自ら許可を取消すことです。

返納によって上記の許可を失った場合は、5年を待つ必要はなく、いつでも許可を取ることが可能です。

 

許可が取り消しとなり聴聞から取り消しの決定をする日までの間に、廃業等の届出をした者で5年を経過しない者

このケースも、前項と同じで廃棄物関連の許可を取っていた人が、改めて許可を取得する際に関係するものです。

違反によって許可が取り消されることになると、正式に取り消される前に本人やその関係者に「意見」や「言い訳」を述べる機会が与えられます。

これを聴聞といいます。

 

そしてこの聴聞を経て許可が取り消されるまでは、相応の時間がかかります。

 

そこにつけこんで、取消し決定前に許可証を自ら返納し、許可の取消し処分を免れようとする人もいます。

※前述のとおり、許可証を自主返納すれば、5年を待たずに許可は取得できます。

このような、「逃げ得」の防止策として、聴聞に至った段階で許可証を自主返納すれば、取消と同様、5年間は許可の取得はできないことになっています。

 

両罰規定に注意

許可取得後も欠格要件に該当すると許可は取り消されます。

特に許可取得後は環境関連の法律違反には注意が必要です。とりわけ、廃棄物処理法違反により欠格要件に該当してしまうことが少なくありません。

 

例えば、従業員の1人が手抜きで「不法投棄」や「不法焼却」をしてしまい、廃棄物処理法違反となり罰金刑を受けた場合はどうでしょうか?

あなたは、役員ではないし、従業員なら問題ないと思ったかもしれませんが、両罰規定によりその会社にも罰金刑が科される可能性があります。

 

廃棄物処理法違反で罰金刑を科されると廃棄物関連の許可はすべて取り消されることになります。

許可取得後も、欠格要件の内容はもちろん、廃棄物処理法をはじめとした環境系の法律、罰則規定をしっかりと理解し、従業員への教育も忘れずに行うことが必要です。

 

まとめ

いかがでしたか?

欠格要件について長々と解説しましたが、「自分には関係ないよ」という人も少なくなかったかもしれません。

ただし、法人の場合は役員全員が対象となるので、調査に手間がかかるでしょう。

欠格要件の内容はセンシティブな話なので、どうしても確認しにくい部分ではありますが、許可が取れるかどうか左右することなのでしっかり確認する必要があります。

また、役所は審査期間中に犯罪歴や暴力団との関係性を必ず調査しますので、嘘をついて申請をすることは絶対にやめてください。

そして、許可取得後は両罰規定に特に注意してください。廃棄物処理法等、環境法令に違反をして罰金刑を受けて知らず知らずのうちに許可が取り消されるという事例は決して少なくありません。

廃棄物処理法等、環境法令の理解、従業員の教育もしっかり行いましょう。