2011年の廃棄物処理法の改正によって建設現場で発生する建設廃棄物について非常に細かい規定が置かれることになりました。

これによって今まで不明瞭だった排出事業者、責任の所在の特定が明確化されました。

この法改正による情報は小規模建設業者(いわゆる一人親方、個人営業者)に伝わっていないことも多く、知らず知らずのうち法律違反をしていたということも珍しくありません。

この記事では元請業者と下請け業者の責任を解説するとともに、排出事業者の特定や収集運搬業許可についても言及していますので、ぜひ参考にしてください。

建設廃棄物の排出事業者は?

建設廃棄物の排出事業は発注者から直接工事の発注を受けた元請業者です。

これは例えば、元請業者が工事に携わらず、工事自体を下請業者だけで完了させる場合も、発注者と契約を交わす限り排出事業者となります。

※元請業者が排出事業者になるので、建設廃棄物を自社運搬する場合、もちろん産業廃棄物収集運搬業許可は不要です。

 

排出事業者(元請業者)の責任は?

廃棄物処理法に基づき、元請業者は排出事業者責任を負うことになりますので、マニフェストや委託契約書の運用は必須です。

また、下請け業者が建設廃棄物を適切に運搬・処理しなかった場合、措置命令の対象になりますので、注意が必要です。

 

下請業者は産廃運搬業許可が必要

下請け業者が建設工事から発生する産業廃棄物を運搬する場合、産業廃棄物収集運搬業許可が必要となります。

また、孫請業者が下請業者から工事の一部を請け負うなどして、そこから発生した産業廃棄物を孫請業者が運搬する場合も産業廃棄物収集運搬業許可は必要です。

 

下請業者の責任

通常、排出事業所での廃棄物の管理責任は排出事業者のみ負うことになるのですが、工事現場内で廃棄物を保管する場合は下請業者も保管基準を遵守しなけらばなりません。

つまり、保管基準の違反が発覚した場合、元請業者はもちろん、下請業者も改善命令の対象となります。

 

下請業者が排出事業者になる場合がある?

この法改正では例外規定が設けられています。

以下のすべてに該当する場合は不法投棄など不正の可能性は少ないとの判断から下請業者は排出事業者となり、産業廃棄物収集運搬業許可は不要です。

・建物の軽微な修繕維持工事で、請負代金が500万円以下の工事

・アスベスト等の特別管理廃棄物ではない

・1回に運搬する廃棄物の容積が1立方メートル以下であること

・積み替え保管を行わない(運搬途中に保管をしない)

・同一県内または隣接県内の元請業者の指定する場所に運搬すること(元請業者が所有または使用権限のある施設)

・請負契約であらかじめ、下請が自ら運搬する廃棄物の種類とその他を定めて、運搬時にはその契約書の写しを携帯すること

以上のすべての条件を満たすのは非常に難しく、適用されるのは相当レアなケースということになります。

自分で条件に当てはまると判断しても、微妙な差異で適用外ということも十分あり、その場合は無許可営業となります。

下請業者が産業廃棄物を運搬する場合は許可を取るのが無難です。

最後に

2011年の法改正で元請業者・下請業者ともに非常に面倒くさいルールができてしまいました。

状況によっては理不尽ともとれるような規定になっています。

元請業者と下請業者が本来負うはずのないナンセンスな規定は当事者でない私でも首を傾げたくなりますし、私が政治家かなんかなら即撤廃させるでしょう。

しかし、責任の所在が曖昧になるとどうしても不法投棄は増えますし、不法投棄をして捕まらない人がいれば、真面目にルールを守っているのがバカバカしくなってくるのが人情です。

不法投棄の6割以上は建設廃棄物によるもので、これは責任の所在が曖昧さゆえにおこるものです。

責任の所在が曖昧だと、どうしても行政側も責任を追及することが難しいですし、事業者同士が責任をなすりつけ合うことにもなりかねません。

私だったら責任をなすりつけられたり、疑われたりするのは嫌です。

ここからは正論を唱えるようで申し訳ありませんが、やはり不法投棄は世の中にあってはならないことですし、このような法改正もやはり必要だと思います。

また、廃棄物処理法は非常に重い罰則を規定しています。(委託基準違反や無許可営業は5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金)

誰だって自分の身は守りたいですし、長く仕事を続けていく以上、法律はしっかり守っていただきたいと思っています。

そのためにも、今回解説した法改正のルールはしっかり押さえてください。