解体工事を行うには建設業許可や解体工事業登録は必須ですが、状況によっては解体工事業者にも産業廃棄物収集運搬業許可が必要になってきます。
あなたは解体工事業を営んでいて、産業廃棄物収集運搬業許可の必要性を感じているか、または解体工事業者に依頼する側で産業廃棄物収集運搬業許可を持っている業者に依頼するかどうか検討しているのかもしれません。
この記事では解体工事を行う上で産業廃棄物収集運搬業許可が必要になるケースや許可取得のメリットを解説します。
Contents
解体工事業に産業廃棄物収集運搬業許可は必須ではない
前述のとおり、解体工事を行うには建設業許可や解体工事業登録は必須ですが、産業廃棄物収集運搬業許可は必須ではありません。
解体工事を行った後、発生した廃棄物を運搬することになりますが、これは解体工事業者が排出事業者かどうかで運搬業許可が必要になるかどうか決まってきます。
産業廃棄物収集運搬業許可の定義
産業廃棄物収集運搬業許可の定義を簡単に解説します。
そもそも産業廃棄物収集運搬業許可は他業者の出した産業廃棄物を委託を受けて運搬する際に、必要になる許可です。
つまり、排出事業者が自社の事業で出た産業廃棄物を自ら運搬する場合には必要ありません。
排出事業者は誰?
例えば、発注者と元請業者が契約をして、解体工事を下請負業者が請け負う場合で考えてみましょう。
この場合、解体工事で発生した産業廃棄物の排出事業者は発注者と契約をした元請業者です。
これは、解体工事自体は下請業者が行うので、下請業者が排出事業者ではないかと考えがちですが、廃棄物処理法では発注者と直接契約を交わす者=元請業者が排出事業者となります。
産業廃棄物収集運搬業許可が必要なケース
前述のとおり、排出事業者は発注者と直接契約をした業者のことです。
解体工事業者が元請負業者から請け負って工事をする場合、発生した産業廃棄物を運搬するには運搬業許可が必要になります。
これは排出事業者=元請負業者が産業廃棄物を発生させたことになるので、解体工事業者は委託を受けて運ぶことになるからです。
許可が不要なケース
逆に、解体工事業者が発注者から直接仕事を請け負った場合、解体工事業者が契約者=排出事業者となるので、廃棄物を自社運搬する場合は許可が不要になります。
解体工事業者が許可を取得するメリットは?
下請負業者である解体工事業者が産業廃棄物収集運搬業許可を持っていない場合、元請業者は廃棄物の運搬を別途、許可をもっている他の産廃業者に依頼しなければなりません。
元請業者にお得意様の産廃業者がいない場合、解体工事業者が運搬業許可を持っていることはアピールになりますし、下請業者に選ばれる可能性はぐっと上がるのではないでしょうか。
企業が一定の水準を超えていることをアピールできる
産業廃棄物収集運搬業許可を取得するには5つの要件をクリアする必要があります。
この要件をクリアするにはそれなりの水準が求められます。
運搬業許可を持っていることを必要としないケースの場合でも、企業が一定の水準を超えているということは業者選定においてアピールできますし、信頼度も全然違います。
産業廃棄物収集運搬業許可の取得を検討されている方は、こちらの産業廃棄物収集運搬業許可の要件とは? | 5分で理解できる5つの要件の全体像をぜひ一読ください。
具体的にアピールできる水準は以下のとおりです。
経営が安定している
産業廃棄物収集運搬業許可を取得するには財務諸表という書類を提出し、経営状態が安定していることを証明しなければなりません。
これを経理的基礎を有しているといいます。
この財務諸表は更新の際にも提出する必要があり、赤字では更新できませんので、継続して経営が安定していることの証明になります。
経理的基礎についてはこちらの産業廃棄物収集運搬業許可 | 経理的基礎要件を徹底解説!で詳しく解説しています。
暴力団員がいない
許可を取得するには欠格要件に該当しないこと必要です。
この欠格要件には暴力団員がいてはいけない旨が規定されており、役員等に暴力団がいれば許可は取得できません。
もちろん、許可取得後も調査をするわけではないので、これだけで完璧に暴力団がいないと言い切れませんが、暴力団がいないことをある程度アピールすることができます。
欠格要件についてはこちらの産業廃棄物収集運搬業許可 | 初心者向けに欠格要件のポイントを解説!で詳しく解説しています。
運搬施設や車両などの設備を保有している
許可を取得する際、廃棄物に見合った車両や施設等を保有している必要があります。
通常、適切な設備を所有していれば不法投棄など不適切な処理はしないと認識されています。
まとめ
産業廃棄物収集運搬業許可は解体工事業者にとって必須ではありませんが、下請業者が許可を持っていると、元請業者は工事を合理的に進めていくことができますし、信頼を担保するものになります。
また、何よりも許可を持っていると解体工事業者にとっても仕事の幅が広がりますし、産業廃棄物収集運搬業許可は非常に相性の良いものと言えます。
産業廃棄物収集運搬業許可は多くの企業が下請業者の選定基準に設定していますし、解体工事業者が事業を大きく展開していこうと考えるときには必須の許可になるのではないでしょうか。