マニフェストは、紙マニフェストと電子マニフェストのどちらかを使用して運用することになります。

この記事を読んでいる人は、少なからず電子マニフェストの利用を意識しているのではないでしょうか?

また、紙と電子のどちらがいいのか迷っているのかもしれません。

電子マニフェストを導入するかどうかは、まず電子マニフェストのメリットとデメリットをよく比べ、自社の状況、取引先の状況も考慮し、自社に本当に必要かどうか検討する必要があります。

この記事では電子マニフェストのメリットやデメリット、紙マニフェストとの違いを詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

電子マニフェストとは?

電子マニフェストとは、マニフェストの情報をすべて電子化し、オンライン上でマニフェストのやりとりを行うシステムです。

この電子マニフェストは、国が指定する公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが運用・管理し、JWネットと呼ばれるネットワークでやりとりをすることになります。

ただし、利用するには、排出事業者、収集運搬業者、処分業者の3者がすべてが電子マニフェストを導入している必要があります。

1人でも電子マニフェストを導入していなければ、他の全員が利用できないので、自分の意思だけで利用できるというものではありません。

 

電子マニフェストのメリット・デメリット

電子マニフェストのメリット

事務作業の効率化

紙マニフェストに比べると、やはり事務作業時間が大幅にカットできる利点があります。

日本産業廃棄物処理振興センターの調査では、紙マニフェストでの事務作業時間が年間108時間なのに対し、電子マニフェストでの事務作業時間は年間50時間という結果が出ています。

法令遵守のしやすさ

入力項目が管理されており、項目を全て入力しなければ、マニフェストが発行されないので、記載もれ・記載ミスを防止できます。

また、処理終了確認期限が近づくと、返却されていないマニフェスト等の確認の注意喚起を促してくれます。

データの透明性

廃棄物の処理状況がリアルタイムで確認できます。

排出事業者には、情報処理センターから、メールなどで運搬終了報告、処分終了報告、最終処分終了報告の通知がされます。

マニフェスト交付状況報告書の提出義務の免除

紙マニフェストの場合、年に一度、マニフェスト交付状況を都道府県等に報告する義務がありますが、電子マニフェストではこれを情報処理センターが代行してくれます。

マニフェスト保管の不要

紙マニフェストは5年間の保管義務があります。

電子マニフェストでは、マニフェスト情報が情報処理センターに保存されるので、マニフェストの保管義務がありません。

 

電子マニフェストのデメリット

使用料がかかる

電子マニフェストの利用には使用料がかかります。紙マニフェストよりもコストは高くなります。

料金体系は以下のとおりです。

A料金:基本料(年額)25,920円、使用料(登録情報1件につき)10.8円 →1,200件以上の登録でメリットがある

B料金:基本料(年額)2.160円、使用料(登録情報1件につき)66件まで無料、以後67件目から32.4円 →1,199件以下の登録ならメリットがある

紙マニフェストとの併用になる

すべての産廃業者が電子マニフェストを利用しているわけではないので、電子マニフェストに対応していなければ、紙マニフェストを使用せざるを得ません。

紙マニフェストとの併用で、自社の状況によっては業務が複雑となることがあります。

システム障害で入力・閲覧ができない

アクセスが集中するなど、システムがダウンすると、その間は入力や閲覧はできません。

 

どういう場合に導入するか?

導入した方がいい場合

委託先の処理業者や契約先の事業者のほとんどが、電子マニフェストを導入済みの場合は、紙マニフェストと併用することも少なくなるので、電子マニフェストの導入は大きなメリットとなります。

また、産業廃棄物が毎日大量に発生していたり、大量にやり取りする場合も、電子マニフェストを導入すれば、事務作業の効率化を図ることができます。

 

導入する必要性がない場合

反対に産業廃棄物が少量しか発生しなかったり、産業廃棄物のやり取りが多くない場合は、電子マニフェストのランニングコストの回収が難しくなるので、導入するメリットはないでしょう。

また、委託先の処理業者や契約先の事業者が、あまり電子マニフェストを導入していない場合も、紙マニフェストと併用になりますし、導入の必要性は少ないでしょう。

 

まとめ&注意点

いかがでしたか?

電子マニフェストの効果が出るかどうかは、メリットとデメリットを含め、自社の状況や取引先の状況をよく検討する必要があります。

前述のとおり、廃棄物の種類が多かったり、委託先・契約先の会社が多い場合は、導入のメリットはありますが、そうでない場合は紙マニフェストとの併用などにより、導入することによって、仕組作りがより煩雑になる可能性もあります。

※紙マニフェストと電子マニフェストの比較

  紙マニフェスト 電子マニフェスト
コスト 安い 基本料金+使用料+加入料(初年度のみ)
返送確認 郵送 メール
運搬・処分終了報告 運搬・処分終了後、10日以内 運搬・処分終了後、3日以内
情報の把握スピード 遅い 早い
保存義務 5年間 不要(情報処理センターが保存してくれる)
行政への実績報告 必要 不要

 

導入する上での注意点としては、排出事業者は産廃棄物を引き渡す際に、収集運搬業者に受渡確認票というものを渡す必要があるので、完璧なペーパーレスではない点が挙げられます。

また、収集運搬業者や処理業者の処理終了報告に関する違いがあります。

紙マニフェストでは、運搬終了日・処分終了日から10日以内に必要事項を記載し、排出事業者等に返送しますが、電子マニフェストでは運搬終了日・処分終了日から3日以内に必要事項を入力して情報処理センター(JWNET)に報告しなければなりません。