PCB廃棄物は、特別管理廃棄物に該当し、1972年以降は製造が行われていません。
しかし、まだまだ多くのPCB使用製品が出回っていますし、処分方法が限られているため多くのPCB廃棄物が保管されたままとなっています。
ただし、2016年のPCB特別措置法(以下、PCB特措法)の施行でPCB廃棄物の処理が広域的に進みつつあります。
この記事では、PCB廃棄物とPCB特措法の概要について解説しています。また、PCB廃棄物を運搬もしくは処理する際のポイントなども併せて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
PCB廃棄物とは?
PCBは日本語で「ポリ塩化ビフェニール」と呼ばれ、英語の「poly Chlorinated Bipheny」の略語です。
PCBは次のような特徴があります。
- 熱で分解しにくい
- 電気絶縁性が高い
- 燃えにくい
- 耐薬品性に優れている
このような特徴から、PCBは、高圧トランスや高圧コンデンサなどの電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体の他にも、塗料やノンカーボン用紙など様々な製品に使用されていました。
毒性がある
1968年のカネミ油症事件を発生をきっかけに次のような有毒性が明らかになりました。
- 自然界では分解されない
- 生物の脂肪に蓄積される
- 発がん性が高い
- 内臓障害、皮膚障害、ホルモン異常などの原因となる
- 食物連鎖や生物の移動が原因で球上に拡散される
- 微量の摂取を続ければ中毒症状が起きる
特に人体への有毒性が懸念され、1972年以降は製造が禁止されました。
PCB特措法の内容
上記のとおり、PCBには有毒性があるため、国際的にも規制をする動きがあり、2004年にはストックホルム条約が発効しました。
この条約では、製造、使用の禁止と2028年までに適性な処分を行うことが定められています。
そして、日本においてはPCB特措法が2001年に制定され、PCBを保管している事業者に、保管状況の届出や2016年7月までに(2027年3月に延長)PCB廃棄物を処分することなどを義務付けています。
届出
PCB廃棄物を保管している事業者は、PCB特措法に基づいてPCB廃棄物の保管と処分の状況について、都道府県知事(または政令市長)に届出をしなければなりません。
この届出は、処分が終了するまでの間、年1回(毎年6月末まで)継続して行う必要があります。
また、事業者から提出された上記の届出の内容は一般に公表されることになります。
保管
PCB廃棄物は処分方法が限られているので、長期間の保管が必要になります。
そのため、通常の廃棄物の保管基準に加えて、次の保管基準が定められています。
- 容器に入れて密封する
- 揮発防止のための措置をとる
- 高温にさらさないようにする
- 腐食防止のための措置をとる
この基準を遵守するには具体的に次のような管理が必要となってきます。
- 関係者以外扱えないような施錠等の措置が可能な場所(倉庫など)
- 適切な表示をする
- 密閉容器に収納し、さらにオイルパンなどの流出防止措置を施して保管する
- 保管状況の確認を適宜にする
PCB廃棄物の収集運搬
PCB廃棄物は、廃棄物処理法で「特別管理産業廃棄物」に指定されています。
そのため、PCB廃棄物を収集運搬するには特別管理産業廃棄物収集運搬業許可が必要となります。
ただし、PCB廃棄物は他の特別管理産業廃棄物と許可基準が異なってきます。
具体的に言うと、運搬車両や運搬容器が細かく規定されています。
また、安全管理責任者と運行管理責任者を各1名ずつ選任し、JWセンターが実施する「PCB廃棄物の収集運搬業作業従事者講習会」を受講しなければなりません。
※受講後、試験に合格する必要があります。受講日数は1日です。開催地や日程、料金など詳しくはJWセンターのこちらのページでご確認ください。
環境省からPCB廃棄物の収集運搬についてのガイドラインが発行されています。以下にリンクを貼っていますので、参考にしてください。
PCB廃棄物の処分
PCB廃棄物の処分は、含まれるPCB濃度によってふたつの処理方法がとられます。
大きく分けて、高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物に分けられ、処分方法や処理施設が異なります。
高濃度PCB廃棄物
高濃度PCB廃棄物は、「日本環境安全事業株式会社(JESCO)」の処理施設で処分されます。JESCOの処理施設は全国に5か所あります。
JESCOは政府が100%出資している特別会社で、北九州、大阪、豊田、東京、北海道に処理施設を設けています。
廃棄物処理法で認められている処理方法は、「脱塩素化分解」「水熱酸化分解」「還元熱化学分解」「光分解」「プラズマ分解」の5つの処理技術です。
また、高濃度PCB廃棄物を上記の処理施設に運搬するには、「日本環境安全事業株式会社(JESCO)」の入門許可を得る必要があります。
低濃度PCB廃棄物
低濃度PCB廃棄物はJESCOではなく、国の認定を受けた「無害化処理認定施設」で処分されます。平成27年7月の段階で、全国で26事業者の処理施設で処理が可能です。
また、都道府県知事等から特別管理産業廃棄物処理業の許可を受けた事業者の処理施設でも処分可能です。
低濃度PCB廃棄物の処理方法は、焼却処理がほとんどです。
微量PCB廃棄物はPCB廃棄物として扱われるの?
PCBを使用していないのに(意図的でない)微量のPCBが混入した電気機器等が廃棄物となり、その可能性を完全に否定できない場合は、たとえPCBが微量であっても、PCB廃棄物となります。
ただし、微量のPCBでも、PCB濃度が0.5ppm以下の場合は、微量PCB廃棄物となりません。この場合は普通の産業廃棄物として扱われます。
また、微量PCB廃棄物は、低濃度PCB廃棄物として処理されます。
ちなみに、低濃度PCB廃棄物は、「微量PCB」と「低濃度PCB含有廃棄物」の2つを含んだものです。
そして、低濃度PCB含有廃棄物とは、PCB濃度が5000ppm以下のもので、微量PCB廃棄物を除いたPCB廃棄物です。
PCB特措法改正のポイント
2001年にPCB特措法が施行されたときは、2016年7月までにPCB廃棄物を処分することを義務付けていましたが、2016年8月1日の改正PCB特措法の施行で2027年3月まで延長されることになりました。
これは、PCB使用製品が想像以上に多いことやJESCOへ処分委託をするつもりのない事業者が多いこと等が原因のようです。
また、この改正で、今までPCB廃棄物のみ規制対象だったのが、PCB使用製品まで規制が及ぶことになりました。
※改正PCB特措の概要の詳細はこちらの平成28年改正PCB特別措置法の概要(環境省)を参照してください。
最後に
いかがでしたか?
製造の中止から40年以上経った今もなお、使用中の高濃度PCB使用製品が多数存在しています。
また、処分委託をする見込みのない事業者だけでなく、保管事業者が破産をしたり、不明が原因で、処理ができていないPCB廃棄物も多数存在します。
PCB特措法が改正されたのは、やはり期間内に処理を確実にするための対策が必要だからです。
法律が改正されるということは、ある意味、規制が厳しくなることを意味します。
また一方で、人体に有害な廃棄物が地球上にいつまでも残っているというのは誰が聞いても気のいい話ではないはずです。
届出がされた高濃度PCB廃棄物については、速やかにJESCOへ処分委託が行われることが期待されています。