アスベストは、熱や摩擦などに強いという性質から主に工業製品や建材製品に使用されてきました。

しかし、アスベストは肺がんや中皮腫などの健康被害を引き起こす可能性があることから現在では使用が禁止されています。

使用が禁止されているものの建設現場などでは依然、廃棄物として排出されており、他の廃棄物よりも厳重な取り扱いが求められます。

アスベストを含む廃棄物は大まかに「廃石綿等」と「石綿含有廃棄物」の2つに分類されますが、今回はこの2つの違いについて分かりやすく解説します。

アスベストの廃棄物は2種類

アスベストは、石綿(いしわた、せきめん)と呼ばれており、この石綿を含む廃棄物は飛散性の有無によって廃石綿等石綿含有廃棄物に分類されています。

1つずつ詳しく確認していきましょう。

廃石綿等について

廃石綿等とは、石綿が含まれたり、付着している産業廃棄物のうち、飛散するおそれがある廃棄物のことです。

具体的には以下により発生するものです。

  • 建築物やその他の工作物に使用される材料に石綿が吹き付けられたり、含まれているものを除去する事業(石綿建材除去事業)

→ 吹付け石綿、石綿保温材、けいそう土保温材、パーライト保温材など

  • 大気汚染防止法に規定する規定特定粉じん発生施設が設置されている事業場で生じた石綿で集じん施設により集められたもの

除去作業で使用された防じんマスクや作業着、集じんフィルター、その他の用具など石綿が付着しているおそれのあるものも廃石綿等として扱います。

特別管理産業廃棄物収取運搬業許可について

廃石綿等は、特別管理産業廃棄物に該当します。

委託を受けて特別管理産業廃棄物を運搬する場合は、特別管理産業廃棄物収取運搬業許可が必要となります。

石綿含有廃棄物

石綿含有廃棄物は飛散性がなく、「石綿含有産業廃棄物」と「石綿含有一般廃棄物」に分類されています。それぞれの定義は廃棄物処理法により以下のとおりに定められています。

石綿含有産業廃棄物

  • 工作物の新築、改築または除去に伴って生じた廃石綿等以外産業廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの

→ 具体的には、住宅屋根用化粧スレート、ビニル床タイル、煙突用ライニング材、石綿含有ケイ酸カルシウム板1種などが該当します。

石綿含有一般廃棄物

  • 工作物の新築、改築または除去に伴って生じた一般廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの

→ 日曜大工によって排出された石綿スレートなど

特別管理産業廃棄物である廃石綿等を飛散させないようにコンクリート固化させたとしても普通の産業廃棄物とはならないので注意が必要です。

普通産廃となるように処理できるのは「溶融施設による方法」や「無害化認定を受けた者」に限定されているからです。

産業廃棄物収取運搬業許可について

石綿含有産業廃棄物は、特別管理産業廃棄物ではなく、普通の産業廃棄物です。

委託を受けて石綿含有産業廃棄物を運搬する場合は、産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。

気をつけたいのは、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可を取得していたとしても、それとは別に産業廃棄物収集運搬業許可も必要となるという点です。

いわゆる、大は小を兼ねるということはできません。

 

アスベスト除去・解体工事の規制法令について

アスベストを含む廃棄物の約8割は建材製品によるものですが、アスベストを含む建材製品は以下の表のとおり、危険度に応じてレベル1~3まで分類されています。

分類 建材の種類 廃棄物の種類
レベル1(飛散性) 吹付け石綿 特別管理産業廃棄物
レベル2(飛散性)

石綿含有保温材

石綿含有断熱材

石綿含有耐火被覆材…etc

特別管理産業廃棄物
レベル3(非飛散性)

石綿含有成形板等

石綿含有仕上塗材…etc

産業廃棄物

アスベストを含む建材の除去・解体工事を始めるには、いくつかの法令による規制を受けることになります。

具体的には、大気汚染防止法、労働安全衛生法、石綿障害予防規則、建設リサイクル法によって作業開始前にいくつかの義務が課されます。

大まかな流れは以下の通りです。

事前調査

除去・解体工事において石綿建材が含まれているかどうかを調査。

目視調査で不明であれば、分析調査が必要。調査結果の記録を3年間保存し、作業所に備え付けます。

2022年4月以降、以下の基準に該当する工事であれば、調査結果を労働基準監督署に届出が必要です

  • 解体工事部分の床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事
  • 請負金額が100万円以上である特定の工作物の解体工事
  • 請負金額が100万円以上である建築物または特定の工作物の改修工事

※届出はアスベストの有無にかかわらず必要です。

作業計画

作業の方法や順序やアスベストの飛散防止計画など

計画届出

廃石綿等(レベル1、2)のみ

14日前までに届出る必要があります。

作業責任者の選任

石綿作業主任者、特別管理産業廃棄物管理責任者(廃石綿等のみ)を選任しなければなりません。

特別教育・健康診断

全ての作業者が対象です。

除去後の取り残し確認

石綿除去後、作業場の隔離解除前に資格者によって石綿等の取り残しがないかどうかの確認が必要です。

 

廃石綿等・石綿含有産業廃棄物の収集・運搬方法

廃石綿等と石綿含有産業廃棄物の収集・運搬は、運搬基準が定められています。

具体的には以下のとおりになります。

  • 石綿含有産業廃棄物が飛散・流出しないようにする
  • 収集・運搬にあたって悪臭、騒音、振動等によって生活環境の保全上支障が生じないようにする
  • 人の健康と生活環境に被害が生じないようにする
  • 他の廃棄物と混合しないように区分して収集・運搬する
  • 廃石綿に関しては、原則、積替保管をせず、処分場へ直送する

上記の運搬基準を守るために廃棄物の性状に応じた運搬車と運搬容器を使用し、また、それに適した飛散防止策が必要です。

 

廃石綿等・石綿含有産業廃棄物の処理方法

廃石綿等は、以下の3つのいずれかの方法で処理します。

  • 管理型最終処分場で埋め立てる
  • 中間処理施設で融解する
  • 国認定の無害化施設で無害化処理

管理型最終処分場で埋め立てる場合は、固形化もしくは薬剤で安定化し、耐水性の材料で二重梱包する必要があります。

一方、石綿含有産業廃棄物は、以下の3つのいずれかの方法で処理します。

  • 安定型または管理型最終処分場で埋め立てる
  • 中間処理施設で融解する
  • 国認定の無害化施設で無害化処理

石綿含有産業廃棄物は、できるだけ破損することなく除去・運搬を行う必要があります。

運搬時等にどうしても破断するという場合は、必要最低限にとどめて、水分で十分に湿らすことが必要です。

※中間処理施設での処理方法は融解処理です。「破砕処理」はすることはできません。

まとめ

いかがでしたか?

今回は「廃石綿等」と「石綿含有産業廃棄物」の定義、そして、除去から処理までの大まかな流れについて解説しました。

アスベストを含む廃棄物は、飛散性のレベルに応じて除去方法、運搬方法、処理方法がそれぞれで異なってきます。

また、委託を受けてこれらを収集・運搬をするという場合は、廃石綿等は特別管理産業廃棄物収取運搬業許可、石綿含有産業廃棄物等は産業廃棄物収取運搬業許可が必要です。

「廃石綿等」と「石綿含有産業廃棄物」の取り扱いについては、環境省の石綿含有廃棄物等処理マニュアル(第3版)で詳しく解説されていますので参考にしてください。