産業廃棄物処理業界では、排出事業者に対する責任は年々強化されている傾向があります。
この記事を読んでいる人は、排出事業者責任に理不尽な面があることをご存知だと思いますが、実際「責任はどこまで負えばいいの?」と漠然とした不安があるのではないでしょうか。
ただし、このような理不尽な面はあっても、排出事業者としてやるべきことをし、優良な産廃業者を見つけることで、排出事業者責任に問われるリスクを大幅に下げることは可能です。
この記事では、排出事業者責任の定義から、リスクを最大限に回避をするポイントまで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
排出事業者はだれ?
そもそも排出事業者とは、誰のことでしょうか?
簡単に言えば、「事業活動に伴って廃棄物を出す事業者」ということになります。
つまり、廃棄物の運搬・処理の委託を受けた業者ではなく、廃棄物を出した業者=排出事業者です。
ただし、廃棄物処理法は建設廃棄物を除いて、排出事業者を明確にはしていません。
そのため、複数の企業が関わりあう場合は、廃棄物の出どころが分かりづらく、排出事業者の特定が難しいこともあります。
その典型が、建設廃棄物です。建設業界は多重下請け構造で複数の工事業者が関わり合っているので、排出事業者の特定が非常に難しい面があります。
そのため、建設廃棄物に限っては、排出事業者 = 元請業者と特定されるようになりました。
排出事業者責任とは?
排出事業者責任を要約すると次のとおりになります。
・自分で出した廃棄物は自分で処理する
・自分で処理できない場合は、処理業者に委託することができる。
・委託をする場合
- 契約は委託契約書で取り交わす(法的責任)
- マニフェストを正しく使用する(法的責任)
- 自分の出した廃棄物は、最初から最後の工程まで適正に処分されているか確認をする(努力規定)
責任はどこまで負えばいいの?
処理業者が不法投棄など不適正な処理をした場合、排出事業者が上記の責任を全うしていれば、責任はすべて免れるの?と疑問に思う人もいるでしょう。
しかし、排出事業者 = ゴミを出した人が責任を負うことになるので、責任を全うして例え法的責任がなくても、廃棄物の撤去に協力するなど、何かしらの責任は果たすことになります。
これが、排出事業者責任が理不尽と言われる理由です。
また、注意したいのは、不法投棄などがあった場合、書面等に少しのミスがあっても法的責任が問われるという点です。
例えば、委託契約書に空欄やちょっとした記載ミスでも責任が問われます。
これは、本人はそのつもりがなくても「不法行為を助長した」などと、勝手に拡大解釈をされるわけですが、排出事業者責任はどこまでも理不尽に責任が及ぶといっても過言ではありません。
打つ手はないのか?
100%排出事業者責任を免れるとなると、これはもう自分で処理施設を設けて、廃棄物を自己処理をするしかありません。
しかし、そんなことは現実的に不可能です。
では、指をくわえて待つしかないのでしょうか?
そんなことはありません。100%防ぐことはできなくても、最大限にリスクを回避する、やるべきことはあります。
それは簡単に言うと、次の3つです。
1、委託契約書やマニフェストなどの書面の不備・不適切な運用がないようにする。
措置命令の対象・・・委託基準違反に問われる。
直罰適用の可能性がある・・・5年・1000万円の罰金
2、処理業者に対する「注意義務違反」がないようにする。
違反をすると措置命令の対象となる。
3、優良な産廃業者を選ぶ
特に、1は法的責任を問われるので、絶対にミスがないようにしなければなりません。
措置命令とは不法投棄に対する現状回復命令などをいいます。
不法投棄が起こると、まず行政機関が調査するのは、委託契約書とマニフェストです。書類に少しでも記載ミスがあったり、1つでも空欄があると、拡大解釈をされて法的責任を問われる可能性が高まります。
委託契約書などの書類に問題がなければ、適切に注意義務を果たしてかを調査されます。
注意義務とは?
注意義務というのは、廃棄物処理法の第19条の6第2号に記載されており、要約すれば次のようなものです。
・不当に安い金額で委託していない
・普通に考えて不適正処理が行われると分かり得るような場合は、委託をしない。
・行政処分を受けていないか、立ち入り調査を受けていないか、周辺住民とトラブル等がないかどうか確認をする。
・中間処理業者と最終処分業者の委託契約書を確認する
・最終処分場の残余容量を確認する。
・現地確認
※注意義務を果たすための具体的な手段についてはこちらの環境省通知「行政処分の指針について」(平成25年3月29日)を参考にしてください。
優良な産廃業者の選定
排出事業者は、より信頼できる処理業者をいかにして見つけることができるかにかかっています。
今は、情報公開が進んでいるということもあり、ネット上で産廃業者の様々な情報を仕入れることができます。
また、優良産廃処理業者認定制度というものがあります。
この制度は通常の許可基準よりも厳しい基準をクリアした優良な産廃業者を、都道府県や政令市が審査して認定するので不適正処理や不法投棄をされるリスクを最大限に回避することができます。
優良産廃処理業者認定制度についてはこちらの産業廃棄物収集運搬業|優良産廃処理業者認定制度の概要とメリットを解説で詳しく解説しています。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では、法律の規定を守って、きちんと責任を果たしていも、思いもよらないところで不適正処理がされることがある = 理不尽な面があることをお話ししました。
不法投棄がされた場合、排出事業者はどんなに責任を全うしていても、社会的責任を免れません。
しかし、最大限にリスクを回避するということはできます。
1、委託契約書やマニフェストなどの書面の不備・不適切な運用がないようにする。
2、処理業者に対する「注意義務違反」がないようにする。
3、優良な産廃業者を選ぶ。
この3つは必ず押さえてください。