環境省はWDS(廃棄物データシート)を委託契約書に添付することを推奨しています。

しかし、これからWDS(廃棄物データシート)を使うことを検討している人は、およそ次のような疑問がありませんか?

・推奨されているけど、本当に委託契約書に添付する必要性はあるの?

・そもそもWDS(廃棄物データシート)を提供する理由って何?

・WDS(廃棄物データシート)の記入事項や書式は決まっているの?

この記事では、このような疑問を中心に解説しています。また、特別産業廃棄物を委託する際の注意点も解説していますので、ぜひ参考にしてください。

WDS(廃棄物データシート)とは?

排出事業者は、委託契約書において産業廃棄物の情報(廃棄物の性状、取扱いの注意事項など)を記載することを義務付けられています。

WDS(廃棄物データシート)は産業廃棄物についての情報をより詳しく記載するために、その情報を補完する目的で使用されます。

ただし、WDSの委託契約書への添付は義務ではありません。

特にWDSが使用される産廃の品目は次の4つです。これらの産廃は見た目では有害性が判断しづらく、事故も多いからです。

  • 廃油
  • 廃酸
  • 汚泥
  • 廃アルカリ

※ばいじんや鉱さい、燃え殻など環境保全上の支障がある可能性があれば対象になります。これらの廃棄物は付着・混入などにより有害物質等を含有することがあるからです。

 

WDS(廃棄物データシート)を提供する必要性は?

産廃収集運搬・処理業者が廃棄物を安全に処理するためには、廃棄物の取り扱い上の注意点など産廃業者に適切な情報提供が必要です。

この情報提供を疎かにすると、重大な事故を引き起こす危険性があります。

例えば、収集運搬業者に廃棄物の適切な情報提供を行わなかったために、ガスを含む廃棄物をパッカー車で圧縮してしまい、そのガスが原因で、引火・爆発しパッカー車が炎上してしまう事故がありました。

同様に、保管・処分時にも情報提供不足で、引火性のある廃棄物が原因で火災になる事故も発生しています。

このような事故は事前に十分な情報提供があれば、防げるものばかりですので、WDS(廃棄物データシート)等でさらに詳しい情報を提供する必要があります。

 

WDSの書式や記載事項は?

WDSの書式は環境省が公開していますが、法定の必要事項が記載されていれば、書式は特に何でもかまいません。

WDSに記載するものは、本来、すべて委託契約書に記載されているものです。

それを一つずつ、委託契約書に記載してもいいのですが、実務上は別途、WDSに記載するのが一般的です。

主な記載事項は次のとおりです。

・産業廃棄物の性状や荷姿・・・性状は廃棄物の固形や液体などの分別、荷姿とは「ドラム缶」や「コンテナ」など廃棄物を運搬するときの荷姿です。

通常の保管状況下で腐敗、揮発等の性状の変化・・・運搬や保管をする際の廃棄物の取り扱い上の注意点

他の廃棄物と混合することで生じる支障・・・他の廃棄物と混合することで化学反応を起こす場合の注意点など

・化学物質含有マークの表示に関する事項・・・電子機器を廃棄物として運搬・処理委託する場合など

・石綿含有産業廃棄物の有無

・その他特筆すべき取扱注意点・・・あればでOK。

 

以上の事項は委託契約書かWDSに必ず記載することになります。

※WDS(廃棄物データシート)の書式や記入例、記載方法はこちらの環境省のホームページで確認できます。

 

WDS(廃棄物データシート)などの情報提供時期について

WDSは委託契約書に添付して提出するのですが、できれば委託契約前に産廃業者に提出するのが望ましいです。

それは、廃棄物の種類・性状によって、運搬・処理の可否判断、迅速に対応できるかなど、事前に適切な判断・見積もりができるからです。

また、排出事業者と産廃業者が協議・打ち合わせを行いながら、WDSを作成するのもポイントです。

こうすることで後で「聞いた、聞いていない」などの食い違いを避けることができます。

 

特別産業廃棄物を委託するには事前の情報提供が必須

普通の産業廃棄物の場合は、WDS(廃棄物データシート)などの事前の情報提供は任意で義務ではありませんが、特別産業廃棄物の場合は、委託をする際の事前の情報提供が必須です。

特別産業廃棄物を処理委託するには、「委託契約書での情報提供」と「委託をする際の事前の情報提供」の2つが必要なのを押さえてください。

※違反すると、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」の対象になります。

 

まとめ

WDS(廃棄物データシート)の活用は義務ではありませんが、排出する廃棄物のことを一番よく分かっているのは排出事業者ですし、適切で安全な処理を行うためにもやはりWDSを利用するのが望ましいです。

ただし、2回目以降、産業廃棄物の性状等に変化がない場合は、1回目の提出だけで大丈夫ですし、建設廃棄物などのように危険性が全くない場合は、WDSのような資料は必要ありません。

また、特別管理廃棄物の処理を委託するには、委託をするたびに、文書で事前の情報提供が必要です。(委託契約書に記載した情報提供内容と特別管理廃棄物の種類と数量)